最後の家族旅行で見たあの夕日【過去を取り戻すために】

あなたの記憶の中で最高の思い出は何ですか?

 

その日を取り戻したいと考えることはありませんか?

 

私は今でもあの日を追い続けるほど、子ども時代に戻りたいと思っています。

 

もちろん、そんなことを考え続けるのは建設的でないことは重々承知です。

 

でも、私は「最後の家族旅行の夕日」を思い出して辛くても、苦しくても、いまだに忘れることができません。

 

今回は、はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」というテーマを募集されていましたので、私の心の整理とともに話していきたいと思います。

 

注意:感情的に書いている部分があります。

 

 

海辺のコテージへ泊まる家族旅行

家族で泊った海辺のコテージ

 

私たち家族が最後に旅行した時に泊まった、とある海辺のコテージ。当時私は小学校の4~5年生だったと思います。

 

そのコテージには数年前にも家族旅行で泊まったことがありだいたいここで何ができるのかは把握しており、私はその日から何して遊ぼうかとてもワクワクしていました。

 

さらに今年は6泊7日と長めの旅行であるため、なんでもし放題。

  • 海で泳ぐ
  • ハマグリをとる
  • 砂の山を作る
  • 車で内陸部に行き観光を楽しむ など

 

特に体を動かしたいので、ほぼ毎日海で遊んでいたような気がします。背中の日焼けがひどいことになりましたが…。

 

他にも、ハマグリを捕ってみたり。観光地に行ってその土地のことを学んだり。

 

とにかく毎日はしゃいで、いろんな発見もして、自分の目に見えるもの全てが輝いていました。

 

それに、コテージで作ってくれる母親の料理がめちゃくちゃおいしい。この日のために用意してくれていたのか、いつもよりもおいしく感じました。

 

こんな日々が一生続いてくれないかなぁと夜に考えた記憶もあります。

 

「でも、終わったとしても次またくればいい」。

 

当時の私はそんな軽い気持ちで家族旅行を過ごしていました。

 

忘れられない「ほおずきのような夕日」

美しさを極めた夕日

 

時間が合えば私はいつも夕日を眺めていました。

 

水平線に沈んでいく夕日は釘付けになるの美しさです。

 

茜色の空、朱色や紫に染まる細長い雲、ほおずきのように真っ赤に染まった夕日、夕日を鏡のように映して金色の道を作る海。

 

当時、自然の景色に無頓着だった私でも、海に沈んでいく夕日は心が揺れ動くほど綺麗なことを感じていました。

 

カメラなどのフィルターを通さずにダイレクトに伝わるその美しさは、どんな言葉でも表せません。

 

私はその夕日を忘れないようにじっと眺めていました。

 

また絶対にここに来るために…。

 

こうしてその景色は私の一生の思い出になります。しかし、宝物にはなりませんでした。

 

失ったものの代償は大きい

寂しさのイメージ画像

 

家族旅行から帰ってから少し経って、母親の体調が悪くなりました。

 

私は「風邪かな?」と思っていましたが、治るどころかどんどん悪化する一方。

 

心配になりますが子どもの私はどうすることもできず、ただ早く良くなりますようにと願うばかりでした。

 

しかし、事態は急に変化します。

 

ある日私が学校から帰ると父親の車がありました。

 

父親はいつも帰りが遅いため「珍しいなぁ」と思いましたが、なぜか嫌な予感がします。

 

いつもよりも重く感じる家の玄関扉を開けると父親が待っていました。

 

なんかいろいろと言われたような気がしますがよく覚えていません。ただ「母親が入院した」ということだけはわかりました。

 

リビングに行くとおやつがテーブルの上に。いつもとは違うのはメモ帳のような紙に母親の文字があったこと。

 

「体調が悪いから入院することにします。心配かけてごめんね。おやつは用意したよ」

 

だいたいこんな内容だった気がします。

 

私は涙を流しながら、急に自分の未来が真っ暗になったことを感じていました。

 

それから数年後、母親は一度は回復したものの、様態がまた悪化しそのまま帰らぬ人となります。

 

その日から家族旅行をしなくなった

灰色の毎日

 

母親が入院してから私たち家族は旅行をしませんでした。いや、できなかったが正しいと思います。

 

父親はただでさえ仕事が忙しいのに家事もしなければならなくなったので、さらに心の余裕ができなくなりました。

 

今、私は就職しているのですが、仕事でヘトヘトになりながらも誰かを養っていくのはものすごく労力がいることがわかります。

 

今の現状を維持していくことで精いっぱいになるでしょう。

 

仕方がないことです。

 

ただ、それでも私はあの日の夕日忘れられませんでした。

 

美しい記憶が自分を苦しめる

思い出に苦しめられる男性

 

最高の思い出は自分を苦しめる時もあります。

 

過去の綺麗だったあの景色を見ていた生活と今の生活を比べてみると、とても悲しく感じるんです。

 

 

「そこまで思い浸るなら家族旅行に行けばいい」とおっしゃるのはごもっともです。

 

確かに、今の私には家族旅行のプランを立てて実行はできるでしょう。

 

しかし「そこに行って私は、家族は本当に楽しめるのか」というのは別の話です。

 

あの日から家族が一人いない状態で、旅行に行ったとしても私はおそらく楽しむことはできません。

 

子どもの頃に行った時と、今の現状を比べてしまい「どうしてこうなった」と悲観してしまうと思います。

 

自分自身のことですが、結構複雑な感情のようです。

 

「あの日の夕日を見たいけど、あの時に感じた輝きはもう二度と戻ってこないため、旅行を実現しても悲しく感じるだけ」

 

そんな葛藤が渦巻いて今も私を苦しめています。

 

あの日をもう一度

家族でそろって夕焼けを見る

 

先ほど「家族旅行に行きたいけど、実現してもむなしいだけ」とは言いましたが、何とか乗り越えたいと今も考え続けています。

 

過去のことを未だに追い続けるのは未練タラタラでみっともないですが、もう一度だけでいいから子どもの頃に感じた輝きを取り戻したいんです

 

失った時間を取り戻すために。過去の自分の誓いを果たすために。次は私が家族の笑顔にするために。

 

そして、「記憶に残っている、あの日」の夕日をまた見るために。

 

あなたには取り戻したい過去はありますか?

 

過去を取り戻すために、あなたの未来に今何ができますか?

 

追記:たまにはノスタルジーな感情に浸るのも気持ちがいいですよ。

 

ほんでは